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エイズ指標疾患とは、文字通りHIV感染者がエイズを発症したかどうかを判定する際の指標となる疾患のことです。
HIV感染者がエイズ指標疾患のどれか1つでも発症したとき、エイズ患者と認定されます。
その指標となる疾患は全部で23種類指定されています。
いずれも日和見感染症であり、健康な免疫力があれば発症することはありません。
HIV感染による免疫不全によって発症するのです。
ただし、23種類の疾患をまんべんなく発症するわけではなく、一部の疾患に集中しています。
では、2021年(令和3年)にエイズ患者と認定された315人の患者は、どのエイズ指標疾患を発症したのでしょうか。
エイズ動向委員会のデータから調べてみました。
2021年のエイズ指標疾患の分布
2021年度のエイズ患者の報告件数は315件でした。
そして報告されたエイズ指標疾患は436件でした。
これは1人のエイズ患者が複数のエイズ指標疾患を発症しているためです。
23種類あるエイズ指標疾患の分布は表の通りです。
【2021年のエイズ指標疾患分布】
指標疾患 | 2021年 | 合計 | 合計の% |
①ニューモシスティス肺炎 | 202 | 5,542 | 53.8% |
②カンジダ症 | 63 | 2,788 | 27.1% |
③サイトメガロウィルス感染症 | 64 | 1,470 | 14.3% |
④HIV消耗性症候群 | 20 | 999 | 9.7% |
⑤活動性結核 | 18 | 629 | 6.1% |
⑥HIV脳症 | 21 | 454 | 4.4% |
⑦カポジ肉腫 | 11 | 409 | 4.0% |
⑧非ホジキンリンパ腫 | 9 | 325 | 3.2% |
⑨クリプトコッカス症 | 6 | 277 | 2.7% |
⑩単純ヘルペスウィルス感染症 | 3 | 236 | 2.3% |
⑪トキソプラズマ脳症 | 5 | 221 | 2.1% |
⑫反復性肺炎 | 1 | 172 | 1.7% |
⑬進行性多発性白質脳症 | 5 | 158 | 1.5% |
⑭非結核性抗酸菌症 | 2 | 131 | 1.3% |
⑮化膿性細菌感染症 | 1 | 113 | 1.1% |
⑯原発性脳リンパ腫 | 3 | 84 | 0.8% |
⑰リンパ性間質性肺炎 | 1 | 41 | 0.4% |
⑱クリプトスポリジウム症 | 0 | 31 | 0.3% |
⑲サルモネラ菌血症 | 0 | 31 | 0.3% |
⑳イソスポラ症 | 1 | 8 | 0.1% |
㉑ヒストプラスマ症 | 0 | 7 | 0.1% |
㉒浸潤性子宮頸癌 | 0 | 3 | 0.0% |
㉓コクシジオイデス症 | 0 | 1 | 0.0% |
合計(報告数) | 315 | 10,306 | 100.0% |
2021年の分布を見ると、件数の上位3疾患で全体の75%以上を占めています。
●ニューモシスティス肺炎 46.3%
●カンジダ症 14.4%
●サイトメガロウィルス感染症 14.7%
エイズ指標疾患
23種類のエイズ指標疾患いついて、私が調べたことを紹介したいと思います。
ただし私は医療の専門家ではなく、単にHIVやエイズに興味があると言う立場で情報収集しています。
記載内容の正確さは保証できませんので、その点は予めご了解ください。
①ニューモシスティス肺炎
●2021年度 202件
●累計 5,542件
●病原菌 ニューモシスチス・イロヴェチ(Pneumocystis jirovecii)
ニューモシスチス肺炎は代表的なエイズ指標疾患の1つであり、ニューモシスチス肺炎の発症をきっかけにHIV感染が判明することも多いのです。
1980年代初め、アメリカでエイズ患者が大きなニュースになったとき、必ずといっていいほどテレビや新聞で見る患者の姿はニューモシスチス肺炎かカポジ肉腫を発症していました。
私はリアルタイムでテレビや新聞で見ました。
当時はニューモシスチス肺炎と言う呼び名ではなく、カリニ肺炎と呼んでいました。
●ニューモシスティス肺炎の病原菌
酵母様真菌であるニューモシスチス・イロヴェチ(Pneumocystis jirovecii)が病原菌です。
この真菌は健康な人の体内にも存在していますが、免疫力が働いて増殖を抑えています。
しかし、HIV感染や、がん治療の化学療法、ステロイド剤の長期服用などで免疫力が低下すると発症することがあります。
●ニューモシスティス肺炎の症状
発熱・咳・呼吸困難が主な症状です。
早期に発見して治療をすれば治りますが、発見が遅れたり治療が不適切だと死亡することもあります。
決して軽く扱う病気ではありません。
②カンジダ症
●2021年度 63件
●累計 2,788件
●病原菌 カンジダ・アルビカンス
カンジダ症の病原菌はカンジダ・アルビカンスと言う真菌(カビの一種)です。
カンジダ・アルビカンスは常在菌であり、健康なあなたの皮膚や口の中、消化器、膣内にも常在しています。
HIV感染に限らず、免疫力が低下してくると増殖を始め、異常に増えたときにカンジダ症として発症します。
カンジダ症として症状が出るのは、
●性器のカンジダ症⇒特に女性に多く、膣カンジダ症と呼ばれる。性感染症でもある。
●口腔カンジダ症⇒HIV感染症の初期に見られる。
●肺・気管・気管支・食道のカンジダ症⇒エイズ指標疾患に指定されている。
肺・気管支・食道のカンジダ症は放置していると致死的症状へと重症化することがあります。
食道のカンジダ症は食品を飲みこむことが出来なくなったり、吐き気や胸部の痛みが出ます。
肺や気管などのカンジダ症は重症化すると呼吸困難に陥ります。
③サイトメガロウィルス感染症
●2021年度 64件
●累計 1,470件
●病原菌 サイトメガロウイルス
サイトメガロウイルス感染症はその名の通り、サイトメガロウイルスの感染によって発症します。
このウイルス感染そのものは珍しいものではありません。乳幼児期に多くの人が感染します。
しかし、乳幼児期にサイトメガロウイルスに感染した多くの人たちは、そのまま発症せず一生を終えます。
ところがHIV感染者、先天性免疫不全患者、臓器移植患者など、免疫力が低下した場合に体内に感染して潜んでいたウイルスが活性化して発症に至ります。
サイトメガロウイルス感染症が発症すると、次のような症状が出ます。
●網膜炎
●消化管病変(びらんや潰瘍)
●脳炎
●末梢神経障害
●肺炎
●副腎不全
このように単一臓器ではなく、多臓器に発症部位が及びます。
④HIV消耗性症候群
●2021年度 20件
●累計 999件
専門書を読むと、HIV消耗性症候群の簡単な説明には次のように書かれています。
●全身衰弱
●スリム病
この2つです。
国立エイズ治療・研究開発センターのホームページによると、HIV感染者が以下の症状に該当するとHIV消耗性症候群と診断されます。
① 通常の体重の10%を超える不自然な体重減少
② 慢性の下痢(1日2回以上、30日以上の継続)又は慢性的な衰弱を伴う明らかな発熱(30日以上にわたる持続的もしくは間歇性発熱)
③ HIV感染以外にこれらの症状を説明できる病気や状況(癌、結核、クリプトスポリジウム症や他の特異的な腸炎など)がない。
下痢、発熱、体重減が長期に渡って続く、繰り返される症状という訳です。
むろん、これらの症状はHIVに感染していなくてもあり得るので、あくまでエイズ指標疾患として診断されるのはHIV感染者にこうした症状がみられた場合です。
HIV消耗性症候群は他の日和見感染症とは異なり、何かの細菌やウイルスに感染して発症するものではありません。
HIV感染に伴う食事摂取の低下、代謝異常、吸収の低下、下痢などが組み合わさって起きると考えられています。
⑤活動性結核
●2021年度 18件
●累計 629件
●病原菌 結核菌
結核は結核菌が体内に感染し増殖することによって発症します。
健康で免疫力が働く人は発病しにくく、免疫力が低下している人は発病しやすいのです。これは日和見感染症そのものです。
それゆえHIV感染者であって、かつ活動性結核の場合はエイズ患者であると認定されます。
活動性結核とは、単に結核に感染しているだけでなく治療を要する状態に発病している結核を指します。
発症する場所は約80%が肺です。いわゆる肺結核です。
しかし、HIVに感染して免疫力が低下した場合の結核は肺だけでなく、リンパ節結核、栗粒(ぞくりゅう)結核、結核性髄膜炎などを発病することが多くなります。(HIV感染症診療マネジメント・医薬ジャーナル社による)
結核の初期の症状はカゼと似ています。
せき、痰(たん)、発熱(微熱)などの症状が長く続くのが特徴です。
また、体重が減る、食欲がない、寝汗をかく、などの症状もあります。
結核は適切な治療をせずに放置していると血を吐いて呼吸困難になり、死に至ることもあります。
「HIV感染症診療マネジメント」によれば、通常結核菌に感染しても発症するのは生涯で10%程度だそうです。
それが、HIV感染者においては1年間で10%発症するそうです。
これはHIVに感染していない健康な人と比較すると100倍も感染しやすいのだそうです。
⑥HIV脳症
●2021年度 21件
●累計 454件
HIV脳症とはHIVが感染することによって脳の機能を低下させたり、脳そのものを委縮させてしまう病気です。
HIV脳症の初期段階では軽い認知症の症状から始まります。
物忘れや集中力の低下、やる気がなくなったり物事への興味がなくなったりします。
そして更に進行すると下肢が動かなくなって歩行不能になったり、震えが出るなどの運動障害が出てきます。
末期には高度の認知症となり、最後は直物人間状態となって日和見感染症を合併して死に至ります。
かつてエイズの有効な治療法がなかったとき、発症から約半年くらいで亡くなる患者がほとんどでした。
⑦カポジ肉腫
●2021年度 11件
●累計 409件
●病原菌 ヒトヘルペスウイルス8型(HHV-8)
カポジ肉腫はヒトヘルペスウイルス8型(HHV-8)によって発症する日和見感染症です。
HHV-8に感染した人が全てカポジ肉腫になる訳ではなく、HIV感染症のように免疫力が著しく低下した場合に発症します。
肉腫というのは、腫瘍性の病変です。そして腫瘍(しゅよう)とは、細胞や組織が体の正常な制御に従わず、かってに増殖して出来た組織の塊(かたまり)です。
体の表面に出来ることもあるし、体の内部に出来ることもあります。
カポジ肉腫がどんな症状かと言えば、顔面・体幹・四股・口腔粘膜など、全身の皮膚、粘膜に皮疹やしこり、こぶができます。
⑧非ホジキンリンパ腫
●2021年度 9件
●累計 325件
●病原菌 EBウイルス
悪性リンパ腫には、大きく分類してホジキンリンパ腫と、それ以外の非ホジキンリンパ腫の2種類があります。
日本では悪性リンパ腫の9割が非ホジキンリンパ腫です。
悪性リンパ腫とは、血液のがんの一種です。
リンパ球にはB細胞、T細胞、NK細胞などの種類がありますが、これらのリンパ球が「がん化」する病気です。
非ホジキンンリンパ腫はEBウイルスの感染が関与していることが分かっているそうです。
EBウイルスは特別珍しいウイルスではなく、あなたも私も多くの人が感染を経験しています。
しかし、普通の健康状態であれば体内の免疫力によってウイルスの増殖を抑えることができ、健康上の問題は発生しません。
ところが、HIVに感染すると体内の免疫細胞が破壊され、だんだんと免疫力が低下していきます。
普通なら問題にならないEBウイルスを駆除することができず、慢性的にEBウイルスがリンパ球に感染し増殖していきます。
そして「がん化」したリンパ球がどんどん増えていきます。
非ホジキンリンパ腫は、以下のような症状が現れます。
●発熱・体重減・寝汗・倦怠感
●頭痛・吐き気・めまい
●腹痛・血便
*『白血病・悪性リンパ腫がわかる本』による。 法研 永井 正 著(自治医大血液科准教授)
要するに、体のどの部分のリンパ節が腫れるかによって症状が異なります。
首や脇の下、足の付け根などのリンパ節が腫れると目で見て分かります。
しかし胃腸、肝臓、脾臓、脳神経など、外からは見えないし触れることも出来ない部分でリンパ節が腫れたり、がん化したリンパ球がしみ込んでいく場合もあります。
⑨クリプトコッカス症(クリプトコックス症)
●2021年度 6件
●累計 277件
●病原菌 クリプトコッカス菌
クリプトコッカス症の病原体は真菌(カビの一種)であるクリプトコッカス菌です。
このクリプトコッカス菌は鳩などの鳥の糞の中で増殖することが知られています。
従って鳩の糞を直に触ったり、乾燥した糞が舞い上がって吸いこんだりして感染します。
ただ、健康な免疫機能が働いている状態で発症する例は少なく、HIV感染症の場合はCD4値が100以下になった場合に発症しやすいとされています。(「HIV/AIDS患者のトラブルシューティングとプライマリ・ケア」南山堂による)
クリプトコッカス症には、クリプトコッカス髄膜炎、肺クリプトコッカス症などがあります。
エイズ指標疾患は「肺以外」と定義されているため、肺クリプトコッカス症を除きます。
クリプトコッカス症の潜伏期は不明で、感染が広がった部位によって症状が異なり、発熱、頭痛、発疹、筋肉痛、体重減少、倦怠感や乾いた咳など様々です。
重症の肺炎や脳の障害によるけいれん、意識障害、性格変化などの症状が出ることがあります。
免疫機能の低下した人が感染すると、脳髄膜炎を発症することが多く、重症化しやすいので注意が必要です。(東京都感染症情報センター ホームページによる)
特にHIV陽性者のクリプトコッカス症は中枢神経に病変を作り、致死的になることもあります。
⑩単純ヘルペスウィルス感染症
●2021年度 3件
●累計 236件
●病原菌 単純ヘルペスウイルス(HSV)
単純ヘルペスは、単純ヘルペスウイルス(HSV)の感染によって発症する病気です。
あなたが単純ヘルペスに感染すると、発疹や水ぶくれなどの皮膚疾患に高熱が出ることもあります。
だいたいは2週間から4週間くらいで治りますが、症状は消えてもウイルスは完全には消えません。
あなたの神経の奥深くにもぐりこんで潜んでいるのです。
そして、あなたの免疫力が落ちて来た時や、隠れ潜む神経に何かの刺激があったとき、再発します。
単純ヘルペスはエイズ指標疾患の1つに指定されていますが、指定されているのは通常の軽い症状ではありません。
●1ヶ月以上持続する、粘膜、皮膚に潰瘍が出るもの
●生後1ヶ月以後で気管支炎、肺炎、食道炎を併発するもの
この2つの場合がエイズ指標疾患として指定されています。
⑪トキソプラズマ脳症
●2021年度 5件
●累計 221件
●病原菌 トキソプラズマ原虫
病原菌であるトキソプラズマ原虫は猫の糞便などに存在し、ほぼ全ての温血せきつい動物に感染します。
大きさは幅が3ミクロン、長さが5~7ミクロン程度です。(1ミクロンは1mmの1000分の1です)
興味深いのは、トキソプラズマ原虫の最終宿主はネコ科の動物であり、人間やその他の動物は中間宿主の位置づけなのだそうです。
つまり、間に色んな動物を経て、最後にはネコ科の動物に感染するのがトキソプラズマ原虫の目的です。
国立感染症研究所のホームページによれば、トキソプラズマ原虫の感染は世界的にみれば全人口の1/3が感染しているそうです。
ただし、ほとんどの人は感染しても免疫力によって発症しません。
ただ、HIVに感染し免疫力が低下していると、体内に潜伏感染していたトキソプラズマが再活性化し、脳炎や肺炎や脈絡網膜炎などの重篤な症状を引き起こします。
⑫反復性肺炎
●2021年度 1件
●累計 172件
HIV感染者が1年以内に2回以上の肺炎を繰り返すと「反復性肺炎」と診断されます。
通常の免疫力を持つ人は1年に2回以上も肺炎になることはまずありません。
HIV感染者における細菌性肺炎で最も多いのは肺炎球菌によるもので、全体の70%を占めるそうです。
また、HIV感染者は健康な人に比べて肺炎球菌による肺炎を発症するリスクが5倍から8倍も高いそうです。
つまり、HIV感染者は免疫力低下によって肺炎球菌に感染しやすく、また繰り返し発症しやすくなるのです。
1992年、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)はHIV感染者に繰り返し肺炎が見られることから反復性肺炎をエイズ指標疾患に加えました。
我が国においてもアメリカ同様、反復性肺炎はエイズ指標疾患に指定されています。
⑬進行性多発性白質脳症
●2021年度 5件
●累計 158件
●病原菌 JCウイルス
進行性多発性白質脳症の病原菌はJCウイルスです。
JCウイルスは特別珍しいウイルスではなく、健常人の70%~80%に抗体が認められます。
すなわち、私やあなた、そしてほとんどの人が幼少期に無症候性にJCVに感染すると考えられているのです。
しかし、健康な状態で免疫力があれば何も症状が出ることはありません。
ところがHIV感染による免疫力低下や、何かの病気で免疫制御の治療を受けている場合などにJCVが再活性化して発症します。
具体的な症状としては、病変部位による麻痺、けいれん、意識障害、脳神経障害などです。
半盲や運動失調、呂律不良などをきたします。
極めて悪い予後ですが、治療効果が効いて免疫力の回復が出来た患者さんは病気の進行が止まったり、回復することもあるそうです。
しかし、重い後遺症が残ることもあります。
⑭非結核性抗酸菌症
●2021年度 2件
●累計 131件
●病原菌 非結核性抗酸菌
非結核性抗酸菌症は、HIV感染によって免疫力が低下し、非結核性抗酸菌によって以下の場合にエイズと認定されます。
●全身に播種(はしゅ:広がること)した場合。
●肺、皮膚、頸部、肺門リンパ節以外の部位に発症した場合。
肝臓や脾臓、腹部リンパ節などが腫れて患部を作った場合にエイズ指標疾患と言います。
⑮化膿性細菌感染症
●2021年度 1件
●累計 113件
化膿性細菌感染症は単独の病気を指す病名ではありません。
複数の感染症を、ある条件下で発症すると、エイズ指標疾患と判断されるのです。
その「ある条件下」と言うのが非常にややこしいのです。
私が読んだ専門書、及び信頼できる医療サイト、その全てで化膿性細菌感染症は同じ説明がされています。
それが以下の説明です。
13歳未満で、ヘモフィルス、連鎖球菌等の化膿性細菌により以下のいずれかが2年以内に、2つ以上多発あるいは繰り返して起こったもの。
●敗血症
●肺炎
●髄膜炎
●骨関節炎
●中耳・皮膚粘膜以外の部位や深在臓器の膿瘍
以上のように、年齢と病原菌と発症頻度と感染症の種類が決められています。
その条件の全てを満たす場合、それはエイズ指標疾患となります。
むろん、HIVに感染していることが前提です。
⑯原発性脳リンパ腫
●2021年度 3件
●累計 84件
リンパ腫とは、文字通りリンパ組織に発生する腫瘍のことです。首や足の付け根、脇などのリンパ節に発症することが多い病気です。
脳リンパ腫は悪性のBリンパ球が脳内で増殖する病気です。
また、脳リンパ腫の前に「原発性」とついています。
この原発性とはどういう意味かと言うと、他の病気の結果として引き起こるのではなく、その臓器自体の病変によって引き起こされる場合を原発性と言います。
先ほど例に出したような首とか脇とかで発生したリンパ腫が転移して脳に出来た腫瘍ではなく、いきなり脳で発生したリンパ腫と言う意味になります。
主な症状としては、身体の麻痺やけいれん、視力障害、知能低下(認知症)、言語障害、頭痛、吐き気、嘔吐などです。
いったん発症すると病気の進行は早く、どんどん悪化していきます。
⑰リンパ性間質性肺炎
●2021年度 1件
●累計 41件
リンパ性間質性肺炎は「リンパ性」であり、「間質性」である肺炎です。
●リンパ性
リンパ性間質性肺炎における「リンパ性」とは何か?
色々調べて見ると、これは「リンパ球性浸潤」と言うことらしいと分かりました。
これもまた難解ですが、要するに免疫細胞であるリンパ球が肺の中に入り込んでいる(浸潤している)状態を指します。
●間質性
「間質性」と言うのは、文字通り間質において炎症を起こした肺炎と言う意味です。
リンパ性間質性肺炎は13歳未満のHIV感染者が対象です。
日本において13歳未満のHIV感染者はごくわずかです。
ちなみに厚生労働省エイズ動向委員会のデータによると、2021年のHIV陽性者で、10歳未満は1件、10歳~19歳で7件のみです。
⑱クリプトスポリジウム症
●2021年度 0件
●累計 31件
●病原菌 クリプトスポリジウム原虫
クリプトスポリジウム症とは、クリプトスポリジウム原虫の感染(寄生)によって生じる腸への障害です。
主な症状として水のような下痢が続きます。他にも胃痛、腹痛を伴うこともあります
健康な人、免疫力が正常な人の場合、症状は2週間程度で収束し、回復に向かいます。
しかし、HIV陽性者のように免疫力が低下している人が感染すると、場合によっては致死的となり命を落とすこともあります。
治療法として、クリプトスポリジウム原虫そのものを攻撃して駆除するような薬はありません。
主な症状である下痢に対する対処療法が主な治療法となります。つまり、下痢止め、水分補給などの治療です。
後は自然治癒を待つ、と言うことですから、早い話治療は免疫力任せ、と言うことになります。
それゆえHIV陽性者にとっては危険な病気となります。
⑲サルモネラ菌血症
●2021年度 0件
●累計 31件
●病原菌 サルモネラ菌
エイズ指標疾患としてのサルモネラ血症は、
●再発を繰り返す
●チフス菌によるものを除く
こう定義されています。
つまり、「再発を繰り返す」、「チフス菌を除く」この2つが条件の、サルモネラ菌による血症と言う訳です。
サルモネラ菌の中にはチフス菌も含まれているのですが、まずそれは除外するという訳です。
次に、単なる腸管上皮細胞への感染だけでなく、菌が血液中に入り込んで全身に回る、「血症」を起こしていることが条件です。
更に、その「血症」を何度も繰り返し発症した場合、エイズ患者と認定されることになります。
症状としては悪寒、38度以上の高熱、呼吸数、心拍数の増加などが現れます。
重症化すると循環器不全、腎不全などに陥ることもあります。
⑳イソスポラ症
●2021年度 1件
●累計 8件
●病原菌 イソスポラ原虫
イソスポラ症とは、イソスポラ原虫による腸管感染症です。
イソスポラ原虫が飲み水や食品などを飲食することで体内に寄生し、激しい下痢や吐き気、腹痛を発症します。
イソスポラ原虫は人間や犬、猫などの哺乳類に寄生するのですが、それぞれ宿主が特化しており、人間に寄生するイソスポラ原虫が犬や猫に寄生することはありません。
エイズ指標疾患になっているイソスポラ症は、免疫力低下による日和見感染症で、
「1ヶ月以上の下痢を伴うもの」
とされています。
う~ん、1ヶ月以上も下痢が続いたら、これはきついですね。命に関わると思います。
㉑ヒストプラスマ症
●2021年度 0件
●累計 7件
●病原菌 ヒストプラズマ・カプスレータム(Histoplasma capsulatum)
ヒストプラズマ症はヒストプラズマ・カプスレータム(Histoplasma capsulatum)による感染症です。
ヒストプラズマ症は日本ではほとんど知られていないと思うのですが、主に北米大陸のミシシッピー河上流域に流行しています。
従って日本から渡航歴のある人が感染したり、海外から菌が持ち込まれて感染します。
主な症状としては、
●発熱
●全身の倦怠感
●体重減少
●呼吸器症状
●皮膚病変(紅斑・丘疹・水泡・潰瘍など)
こうした症状が出ます。
エイズ指標疾患としてのヒストプラズマ症は、
●全身に播種したもの。
●肺、頸部、肺門リンパ節以外の部位に起こったもの
と決められています。
健康な人がたいてい自然治癒するのに比べ、HIV感染者では進行性播種性ヒストプラズマ症と呼ばれる症状を発し、病変が肺以外の全身に及びます。
例えば大腸など消化器系に潰瘍を起こして出血することもあります。
進行性播種性ヒストプラズマ症は未治療だと死に至ります。
㉒浸潤性子宮頸癌
●2021年度 0件
●累計 3件
●病原菌 ヒトパピローマウイルス
膣から子宮へ入る入口部分が子宮頚部であり、子宮頸がんはこの部分に発生します。
浸潤性(しんじゅんせい)と言われる子宮頸がんは、がん組織が子宮頸部の表面から頸部の深部組織へ進行したもの、あるいは体の他の部分に転移して拡がったがんを言います。
なおかつ、HIV感染による免疫不全と思われる症状があった場合に、浸潤性子宮頸がんはエイズ指標疾患となる訳です。
子宮頸がんそのものはHIV感染者に限らず発症します。
厚生労働省の調べでは、2019年に子宮頸がんを発症した女性は10,879人でした。
また子宮頸がんで亡くなった人は2,887人でした。
子宮頸がんが他のがんと異なるのは発症年齢が若いことです。
20~30歳代の若い女性に増えてきており、30歳代後半がピークとなっています。
発症年齢が若いと言う点の他にもう1つ、このがんが他のがんと異なる点があります。
それはヒトパピローマウイルスと言う、ウイルスが感染することによって発症する点です。
主な感染ルートは性行為感染です。
ただし、ウイルスに感染した女性全てが子宮頸がんになる訳ではありません。
多くの場合は免疫力が働いてがんになることはありません。
しかし、中には免疫力の攻撃から逃れて長期間細胞感染したまま、やがてがん細胞へ変っていくものがあります。それが子宮頸がんです。
HIVに感染すると免疫力が低下するため、日和見感染症として子宮頸がんを発症するのです。
㉓コクシジオイデス症
●2021年度 0件
●累計 1件
●病原菌 Coccidioides immitis・Coccidioides posadasii
コクシジオイデス症はコクシジオイデス属による感染症であり、
●Coccidioides immitis
●Coccidioides posadasii
という2種類の真菌が原因菌として確認されています。
真菌、つまりカビの仲間です。
健康な免疫力のある人が発症するのはまれであり、HIV感染による免疫力低下によって発症します。
症状としては、発熱、頭痛、発疹、筋肉痛、体重減少、倦怠感や乾いた咳など様々な症状がおこります。
重症の肺炎や脳の障害まで至ることもあります。
エイズ指標疾患としては、以下の2点が診断条件となっています。
1.全身に播種したもの
2.肺、頚部、肺門リンパ節以外の部位に起こったもの
CD4値から見たエイズ指標疾患
あなたがHIVに感染すると、あなたの体内ではHIVが増殖すると同時に免疫力が低下していきます。
その免疫力を測る指標がCD4値です。
CD4値とは何か?
CD4値とはCD4陽性Tリンパ球の数を言います。これが1μL中にいくつあるかを示すものです。(1μLは、1リットルの百万分の1です)
あなたが普通に健康な状態であればCD4値は700~1300くらいあります。
しかしHIVに感染するとHIVがTリンパ球を破壊してCD4値が小さくなっていきます。
Tリンパ球は免疫機能の中枢細胞であり、これが少なくなると免疫力もどんどん低下していきます。
そしてあなたが健康な状態なら何でもないような病原菌やウイルスによって日和見感染症を発症してしまうのです。
CD4値から見たエイズ指標疾患
「これでわかるHIV/AIDS診療の基本」(南江堂)によると、CD4値によってエイズ指標疾患は次のように区分けされています。(エイズ指標疾患以外の日和見感染症を含む)
【CD4値と日和見感染症】
CD4値(/μL) | 日和見感染症 |
CD4値によらず | 結核症 カポジ肉腫 非ホジキンリンパ腫 細菌性肺炎 口腔カンジダ 帯状疱疹 |
200以下 | ニューモシスチス肺炎 トキソプラズマ脳症 サルモネラ菌血症 クリプトスポリジウム症 反復性肺炎 進行性多巣性白質脳症 HIV脳症 |
100以下 | サイトメガロウイルス感染症 クリプトコッカス髄膜炎 トキソプラズマ脳症 カンジダ食道炎 |
50以下 | 非結核性抗酸菌症(MACなど) 原発性脳リンパ腫 アスペルギルス症 |
*赤字はエイズ指標疾患
上の表のようにCD4値の低下と共に現れる日和見感染症も変わってきます。
かつてHIV感染症が致死的疾患であった頃、ここにあげた日和見感染症を回復させる治療法はありませんでした。
エイズで死亡する、というのはエイズという特別の症状で死ぬのではなく、こうした免疫不全による日和見感染症で亡くなるのです。
補足:HIV感染の無症候期について
本文で説明してきたエイズ指標疾患は日和見感染症です。
HIVに感染した後、免疫力の低下と共に発症します。
逆に言えば、HIVに感染しても免疫力が低下するまでは無症候期であり、エイズを発症しません。
無症候期間はかなり個人差があり、HIV感染後わずか2年とか3年でエイズを発症する人もいれば、10年以上発症しない人もいます。
しかし、全体的な傾向で言えば、段々と無症候期間は短くなっています。
つまり、HIV感染からエイズ発症までの潜伏期間は短くなっているのです。
私がこの事実を初めて知ったのは、「日経メディカル オンラインサービス」の記事からでした。
記事の中でエイズの潜伏期間が短くなっていると指摘されているのは、岡慎一氏で す。
岡氏は、国立国際医療研究センター戸山病院エイズ治療・研究開発センター長であり、長年エイズの治療を研究をされています
図書も数多く出されており、私も何冊か読みました。
岡氏によると、同病院のHIV患者で感染から2年、3年後にエイズ発症レベルまで免疫力が低下するケースが増えているそうです。
かつてのような5年、10年といった長期の潜伏期間ではなくなっているのです。
エイズ発症までの潜伏期間、無症候期が短くなっていることを考えると、早期のHIV検査がいかに大事か分かります。
エイズ動向委員会の報告によれば、日本では新規HIV陽性が見つかった時、すでにエイズを発症している「いきなりエイズ」の割合が約30%です。
あなたに自覚症状がなくても、HIV感染の不安や心当たりがあれば、ぜひHIV検査を受けて下さい。
エイズで亡くなる人は減っているとは言え、エイズ発症前の治療の方が予後がいいのは当然です。
全国の保健所では無料・匿名でHIV検査を受けることができます。
もしも、保健所には行けない、行きたくない事情があなたにあれば、郵送式のHIV検査キットもあります。
正しく使えば保健所や病院のHIV検査並みの信頼性があります。
私も一番最初のHIV検査は郵送式のHIV検査キットでした。
HIV感染からエイズ発症までの期間が短くなりつつあることを忘れないで下さい。
まとめ
23種のエイズ指標疾患について、私が調べた概要を書いてみました。
全て日和見感染症であり、健康で免疫力が正常な人なら、めったに発症しない病気ばかりです。
いかに人間が健康に暮らすには免疫力が大事か、思い知らされます。
人間は、実は常時外敵に襲われており、私たちの体内では免疫機能が戦い、守ってくれているのです。
しかし、HIVと言うウイルスは、その大事な免疫細胞に取りき破壊していきます。
免疫力というガードを失えば、次々と外敵にやられ日和見感染症を発症します。
従って、万一HIVに感染したら、免疫力が大きく低下する前に坑HIV治療を開始する必要があります。
早期発見、早期治療によってエイズ発症を防ぐことができます。エイズ指標疾患を防ぎます。
「早期のHIV検査は救命的検査である」
と言われるゆえんです。
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